>> PROJECT PARAGRAPH >> [ * documentation.html ]
Documentation
ドキュメンテーション
A. オープンコースウェアとは - 1.
B. オープンコースウェアとは - 2.
C. 始まり、拡大、拡散
D. 様々な地域や側面での動勢
E. メリット、デメリットと現実的利用法
F. 諸学問への博物学的な視野
A. オープンコースウェアとは - 1.
ここでは、OPENCOURSEWARE を、広い意味で「大学で正規に提供された講義における講義資料のインターネットでの無償公開」として紹介します。
OPENCOURSEWARE という語は、漠然とした連なりではなく、オープンなコースウェアです。オープンコースのウェアではありません。
OPENCOURSEWARE という語は、「無償公開サービス」そのものを指しています。その中に各「コース」ごとのサイトがあります。コースサイトで公開されているそれぞれのコンテンツは、単に「講義資料」などと呼ばれます。
B. オープンコースウェアとは - 2.
- 1. 大学で正規に提供された講義:
- 原則的には「大学で正規に開講され、正式な単位取得の対象となる講義」に関するものだけが扱われます。逆に言えば、例えば次のものは、OPENCOURSEWARE では公開しません。:
a. 大学での「研究」活動の関係資料
b. 「大学の講義」での資料と認定されない私的な教育材料
c. 在籍している学生の単位取得の対象ではない講演会等での資料
- とはいえ、(c.) に該当する、「大学の正式な履修体系に含まれない、大学の特別講義・講演・セミナー」などは、各大学の都合で OPENCOURSEWARE で公開されることがあり、扱いが曖昧になっています。
- 2. 講義資料:
- 「講義資料」とは、主に、シラバス、スケジュール、講義ノート、スライド、講義ビデオ、配布資料、課題、定期試験、参考文献リスト、などです。
- OPENCOURSEWARE と言えば、当然ながらノート・スライド・ビデオが期待されますが、シラバス、スケジュールのみを公開するケースも多く存在します。そうしたケースでは、各大学のシラバス公開サービスとの境界が曖昧だと言えます。
- 本家のMIT OCWは、通信環境の良くない地域にも発信するために、動画サービスの全面展開はしない、としていますが、そうとは言っても動画配信は、講義公開の決定的なソリューションです。そうなると、講義ビデオ「だけ」を提供するサービスも、OPENCOURSEWARE の領域に入ってくることになります。
- 3. 無償公開:
- OPENCOURSEWARE は、利用に対して、料金を求めるものではありません。
- 一方、単に公開しているに過ぎず、教育的指導や、質問への回答などは原則として行われません。利用者がその内容を習得したかどうかを判断して、単位を認定するものでもありません。学費を徴収して、指導を行い、単位を認定するものは、「e-learningサービス」として、各大学が別に取り組んでいます。
- OPENCOURSEWARE において、「公開」とは、利用登録なども全く求められないことも意味しますが、(無償の)利用登録を部分的に課すケースもあり、やや曖昧になっています。
C. 始まり、拡大、拡散
- 1. そもそもの OPENCOURSEWARE
- OPENCOURSEWARE は、そもそも、MIT(Massachusetts Institute of Technology)が2001年に開始したプロジェクトです。それによって実現したサービス、MIT OPENCOURSEWARE は、「本家の OPENCOURSEWARE」であると言えます。
- MIT OPENCOURSEWARE のインパクトには、「MIT固有」な側面がいくつか指摘できます。
・世界最高峰レベルの大学の講義公開としての需要とブランド力
・英語でそのまま世界に発信できるアドバンテージ
・大学の看板的な取り組みとして、全コースを網羅できるほどになり得た圧倒的な規模
- 2. 狭義の OPENCOURSEWARE
- MITは世界の大学に、同様なプロジェクトの展開を呼びかけました。それに応じて、いくつかの大学で、MIT OPENCOURSEWARE に倣ったサービスが展開されるようになりました。これらは「狭義の OPENCOURSEWARE」と呼ぶことができます。オープンコースウェア・コンソーシアム (OCWC) がそのまとめ役になっています。
- しかしながら、狭義の OPENCOURSEWARE に参入した大学は、ほとんどの場合、「MIT固有」な側面を実現できないままになっています。逆に、それぞれの大学に適した独自の動きを付加し、微妙に軸の異なったサービスを OPENCOURSEWARE として公開したりもしています。
- そのため、「狭義の OPENCOURSEWARE」は、OCWCの枠組みの中にまとまりつつも、次第に多様化してきています。
- 3. 広義の OPENCOURSEWARE
- 講義情報のインターネット公開は、当然ながら MIT OPENCOURSEWARE の前にも後にも、各地で様々な形で試みられています。前項で述べたような、「狭義の OPENCOURSEWARE」内部での多様化に伴って、「MIT OCWと直接のつながりを持たないが、ほとんど同等のサービス」との境界は、次第に曖昧になってきています。
- 純粋に、大学の講義資料を自由に閲覧して学びたい、という利用者にとっては、MIT流派の OPENCOURSEWARE と、そうでない講義情報のインターネット無償公開サービスの違いは、あまり関係がありません。この両方を含めたものを「広義の OPENCOURSEWARE」と呼ぶことにしましょう。
- このサイトでは、この「広義の OPENCOURSEWARE」を取り扱います。つまり、「大学で正規に提供された講義における講義資料のインターネットでの無償公開」であれば、原則として全て含めることにしています。
D. 様々な地域や側面での動勢
- 1. アメリカ合衆国
- MIT OCW は、全コースの OPENCOURSEWARE 化への最終段階に入っています。ユタ州立大学 と JHSPH がそれに続き、丁寧なサイトを構築しています。全体として、基礎的な科目よりは、先端的な・特殊な科目が特徴的です。
- 教育研究の盛んなアメリカでは、OPENCOURSEWARE 以外にも、さまざまな教育資料が公開されています。ワシントン大学 や ArsDigita大学 の情報系コースや、UC Berkeleyの一連のマルチメディア配信( YouTube, iTunesU, GoogleVideo, webcast )なども注目です。
- 2. スペイン・ラテンアメリカ
- ヒスパニック圏も OPENCOURSEWARE の活動が活発な地域です。大学共同体 Universia は、スペインの大学のOCW展開を 取りまとめる とともに、MIT OCW の翻訳 も手がけています。
- 南米コロンビアの UNvirtual は、基礎系科目を中心に、広い分野でコース展開をしています。htmlベースのシステムが特徴的ですが、実際には、pdfベースの方が使いやすい印象です。
- 3. アジア
- 4. 日本
- 5. フランス
- フランスでは、工学系の大学共同体 ParisTech が中心になっています。エクリチュールの伝統もあってか、体系的にまとまった形で著された講義資料が特徴的です。
- また、OCWCに加盟していない教育機関の資料公開も注目です。2つの高等師範学校( ユルム、リヨン )は、本格的な人文系コースを提供し、理系・経済系に偏重気味の OPENCOURSEWARE においては貴重な存在になっています。
- 6. 翻訳
- ヒスパニック圏では、Universia が、スペイン語 と ブラジル・ポルトガル語 への翻訳を進めています。中国 と 台湾 では、それぞれ別の形で翻訳プロジェクトが進んでいます。タイ でも翻訳のプロジェクトがスタートしています。翻訳対象は、いまのところ実質的に MIT OCW だけです。
- 7. サイト構築
- MIT OCW は、サイト構築においても大変模範的で、シンプルながら散漫でない視覚デザインと、明瞭な情報デザイン、大規模ながらも軽く、使いやすい作りになっています。
- OPENCOURSEWARE 用のシステムとしては、CMS である eduCommons が有名ですが、外見が整うという点以上の利点はあまり感じられない、というのが個人的な感想です。とはいえ、複数のサイトで外見が統一的であることは、慣れない言語圏にアクセスする場合に非常に便利です。
- オーストリアの OCW Klagenfurt は、Moodle ベースのシステムを採用しましたが、計画は中断しているようです。
- 一方、オーストラリアの USQ OCW は、Web上で学習することを前提に、シンプルながら丁寧な方式でコンテンツを構築しています。
- 8. アメリカ合衆国 (iTunesU)
- Apple は、iTunesサイト上で講義の動画や音声を発信する iTunesU を立ち上げました。アメリカ国内から、多数の大学が参入していますが、実質的なコンテンツの揃い具合を見ると、まだまだこれから、という印象です。
E. メリット、デメリットと現実的利用法
- 1. メリット:
- [ 利用者 ] ... 無料で利用でき、登録なども不要
- [ 利用者 ] ... ネットでいつでもアクセス・入手できる
- [ 利用者 ] ... 大学教員が正式な講義で利用した、という情報のクオリティ保証
- [ 利用者 ] ... その大学の教育水準を推し量ることができる
- [ 利用者 ] ... 海外の教育にアクセスできる
- [ 大学 ] ... 大学自身の広報や情報公開として活用できる
- [ 大学 ] ... 社会貢献的な取り組みをアピールできる
- 2. デメリット:
- [ 利用者 ] ... 講義と講義資料で補完し合ううちの講義資料のみの公開
- →(講義動画と講義資料の両方を公開しているコースはまだ少数)
- [ 利用者 ] ... そのため教材としての利便性はそれほど高くない
- →(多くの場合、きちんと学習するなら、市販の参考書を買う方が近道)
- [ 利用者 ] ... コースや教員によって、クオリティのバラつきが大きい
- →(大して参考にならない程度のものも多い)
- [ 利用者 ] ... 方針、方式、フォーマットが各大学でバラバラである
- [ 利用者 ] ... 海外の資料には言語的な壁がある
- [ 利用者&大学 ] ... ネットと親和性のある分野に片寄りがち
- →(古典的な分野や、人文系の分野は少な目)
- [ 大学 ] ... 教員が借用転載した資料は、著作権承諾を得る必要がある
- →(Web公開は教育現場での利用ではない)
- [ 大学 ] ... 資料作成や著作権処理、公開準備に手間がかかる
- [ 大学 ] ... 作成や公開に対する金銭的報奨の実現が難しい
- 3. 利用者にとって現実味のある利用法:
- ・ その大学の講義内容、教育水準の把握
- ・ 単独教材として優れたコースを見つけ出して参考書とする
- ・ これまで知らなかった学問領域に出会う
- ・ 現在の学問や教育の状況を大まかに俯瞰し、見聞や認識を深める
- ・ 教材として転用する(主に同じ分野の教育者・指導者)
- ・ 同様の教材作成の参考にする(主に同じ分野の教育者・指導者)
- 4. より本質的な要素:
- ・ 教育と学習のビルドレポートとしてのOCW
- ・ 手段の分配としてのOCW
- ・ 知識の存在を気付かせるものとしてのOCW
F. 諸学問への博物学的な視野
- 1. 教授法の多様性と問題意識の差異
- 地域によって、同じ内容をどのような方法で、説明し、例証していくか。また、地域によって固有な問題意識。
- 2. 内容のコモンプレイス
- 21世紀の世界でにおいて、共通して何が学ばれているか、共通して何が知っているべきものとして捉えられているか、の分布を見る。
- 3. 表現のコモンプレイス
- その言語において、その内容を、どのような言い回しで述べるのか。